国連CEFACTについて

ミッション

国連経済社会理事会(ECOSOC)の枠組みの中で、国連欧州経済委員会 (UNECE) は、貿易円滑化のための勧告と電子ビジネス標準の中心的役割を果たし、国際貿易の成長を促進するための商業と政府両方のビジネスプロセスを対象範囲としています。

 

貿易円滑化と電子ビジネスのための国連センター (国連CEFACT:United Nation  Centre for Trade Facilitation and Electronic Business) は、UNECE貿易委員会の補助的な政府間機関として設立され、これらの分野における世界的な調整と協力の改善を達成するために、世界的に関連性のある作業計画を策定します。

 

国連CEFACTの使命は、先進国/開発途上国/移行経済圏のビジネス/貿易/行政の各組織・機関が、製品や関連サービスを効率的に交わす能力を向上させる活動を支援しています。その主な焦点は、プロセス/手続き/情報の流れの「簡素化」と「調和」を通じて、国内および国際的な取引を促進し、世界の商取引の成長に貢献することです。

 

そのため次のような取り組みを行っています。 

・国際的なプロセス、手続及び取引の主要な要素を分析・理解し、制約の排除に取り組む。

・関連する情報技術の利用を含むプロセス、手続及び取引の円滑化のための手法を開発する。

・政府、業界、サービス協会などのチャネルを通じて、これらの手法の使用と関連するベストプラクティスの両方を促進する。

・世界貿易機関 (WTO) 、世界税関機構 (WCO) 、経済協力開発機構 (OECD) 、国連国際商取引法委員会 (UNCITRAL) 、国連貿易開発会議 (UNCTAD) などの他の国際機関との間で、特に「輸送と貿易のためのグローバルな円滑化パートナーシップに関する覚書」に関連し、作業を調整する。

・国際機関、政府間機関及び非政府機関を含む他の利害関係者と協力することにより、標準及び勧告の開発における一貫性を確保する。特に、国連CEFACT標準については、特にISO/IEC/ITU/UNECE了解覚書 (MoU) との関連で、国際標準化機構 (ISO) 、国際電気標準会議 (IEC) 、国際電気通信連合 (ITU) および選択した非政府組織 (NGO) と協力することによって、この一貫性を促進することができます。これらの関係は、国連CEFACTの活動がグローバルな商取引以外の分野でも広く適用されていること、およびアプリケーション間の相互運用性と多言語環境をサポートする重要な目的を認識し、確立し、維持しています。

 

世界貿易の発展に不可欠なプロセス、情報、技術の3つの柱を網羅するために、国連CEFACTは以下の主要な成果物を提供します。

 ・貿易円滑化勧告

 ・電子ビジネス標準

 ・技術仕様

また、国連CEFACTは、官民の情報交換の相互運用性を確保するため、政府と民間企業の緊密な協力を奨励しています。

 

沿革と活動の歴史

第二次大戦後間もなく、欧州で激増する国際物流に対処するため貿易書式標準化運動が始まりました。

1957年 国連欧州経済委員会(UNECE)に貿易手続簡易化作業部会(WP.4)が設置。

1963年 各種貿易書式基準を勧告し、後の電子データ交換標準化の基礎となる。

1987年 欧州と米国のデータ交換方式を統一したEDIFACT(Electronic Data Interchange For Administration, Commerce and Transport )を開発。

1996年 国連CEFACT 設立が承認される。(最新文書は、2011年に策定されたECE/TRADE/C/CEFACT/2010/15/Rev.2)

2001年 ITベンダーのコンソーシアムOASIS(構造化情報標準促進団体)との共同開発によりebXMLの標準技術仕様を公開。

 

その後、国連CEFACTは、情報通信技術の進化に対応し、標準化の対象を様々な業態に拡大しつつ、業界横断の標準化に取り組んでいます 近年はブロックチェーンやAIなどの最新技術やebXMLの後継となるJSONによるAPIの標準化にも取り組み、開発が進む貿易プラットフォームを含む電子ビジネスの高度化を支える他、SDGs、人権デューデリジェンス、ESG(環境、社会、企業統治)の達成に向けてサスティナブルなバリューチェーンのトレーサビリティと透明性の向上にも取り組んでいます。

 

組織の特徴

国連CEFACTには、国連加盟国、政府間機関、分野別・業界別の機関・組織・団体等からの参加が可能であり、国連CEFACTは、勧告および国際標準の作成に関し、関係各機関・組織等が積極的に貢献することを奨励かつ要請しています。

国連CEFACTは、多くの国際的な民間団体や、貿易の円滑化やサプライチェーンなどの各活動領域 へのボランタリー・ベースによる民間の技術専門家が参加するといったユニークな特徴を持ち、 民間ビジネスの組織・団体と公共機関との間の新たな協調的関係を形成しています。

 

組織体制

Bureau(ビューロ:議長団):

Chair(議長)のMs. Nancy Norris(2024年7月 第30回総会にて議長に選出された。)とPDAを担当する5人の副議長により構成しています。(7月20日現在、VCの担当PDAは未定。総会後のBereau会議において担当PDAを決定する予定。)

 

  Australia, Mr. Steve Capell

  Azerbaijan, Mr. Aliakbar Heydarov

  France, Ms. Hanane Becha(再選)

  Italy, Ms. Liliana Fratini Passi(再選)

  Kyrgyz Republic, Mr. Nurbek Maksutov

 

PDA(Program Development Area:企画開発分野)/ドメイン(活動領域)/プロジェクト:

3つのPDAは、17のアクティブなドメインで構成され、プロジェクトは、何れかのドメインに属します。ドメインにはビューロによってドメインコーディネーターが任命されます。

 

この構造には、CEFACT成果物利用者のニーズを満たすタイムリーな成果物の確保を目指し、合理的な管理とプロジェクト指向のアプローチを取り入れています。

国連CEFACTの作業プログラムは、幅広い知識分野を持つ専門家を集めたPDAを通じてサポートされ、PDAはプロジェクトの形成、推奨、実施、監視を支援します。プロジェクトチームは専門家で構成され、勧告や標準を策定・維持する国連CEFACTの活動で中心的役割を担います。

新たな課題のために新規にプロジェクトを立ち上げる場合は、最低3カ国の合意が必要となります。

 

イベント

Plenary(総会):

国連CEFACTの最高意思決定機関で、年1回の開催が義務付けられています。

全ての国連加盟国は国連CEFACTに参加し、総会に出席することができ、1国1票の権利を平等に持ちます。

上記以外に、国際機関、および国連経済社会理事会が認定したNGOも参加出来るが、投票権はない。

国際機関から世界貿易機関(WTO)、世界税関機構(WCO)、国際海事機関(IMO)、国際標準機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)、国際電気通信連合(ITU)などが参加します。

総会の議決は全会一致が原則ですが、それが成立しない場合は、メンバー国の過半数を定足数として、その過半数の得票によって議決を行う事が出来ます。また、COVID-19によりオンライン開催となり、沈黙は合意とみなされます。

 

 

Forum(フォーラム):

国連CEFACTは、年に2回春と秋に1週間程度の日程でフォーラムを開催しています。フォーラムは、プロジェクト活動に参加する専門家や関係者が参加し、ドメインやプロジェクトの活動方針や課題解決について議論を交わす場であると共に、ドメインやプロジェクトを超えて専門家と意見を交換する場でもあります。

 

 

地域ラポータ

国連CEFACTは、アジア太平洋地域とアフリカ地域における国連CEFACT活動を展開するため、それぞれの地域にラポータと称するポストを設けています。ラポータは、ビューロ、当該地域の国連CEFACTの代表団長(HoD:Head of Delegation)、UNECE事務局および国連の他の地域経済委員会と 調整しつつ、下記の使命を果すこととされています。

 

• UNECE事務局(公的連絡に責任を負う)の支援を受け、政府、政府間組織、関連の業界団体およびビジネスおよび貿易円滑化のための組織間において、国連CEFACTの利益と活動を促進する。

• 国連CEFACTの活動計画への専門家の参加を奨励し、標準、勧告、その他の成果物の履行・実用化を促進する。

• 担当地域における国連CEFACTの活動を調整する。

 

事務局

国連CEFACTの事務局は、UNECE事務局が担い、総会およびビューロの事務局として国連CEFACT活動を支援するとともに、各国代表団長との連絡、通商委員会や欧州経済委員会執行委員会(EXCOM)など上部組織との連絡調整を行います。

 

その他の組織

UN/LOCODE諮問グループ( UN/LOCODE Advisory Group)

UN/LOCODEの継続的な開発と維持は、貿易円滑化活動の枠組みの中で、事務局から政府および貿易相手国へのサービスとして提供されています。UN/LOCODE諮問グループは、官民セクターの主要利用者や各国のUN/LOCODE担当者など、主要なステークホルダーで構成され、UN/LOCODEをボランティアベースで持続的に維持・発展させるために、2017年に発足しました。

 

*UN/LOCODE(貿易と輸送のための港および地名コード)は、貿易のための商品の移動に使用される港、空港、内陸通関デポ、内陸貨物ターミナル、およびその他の輸送関連の場所の市・町・区の名前のコード表現を提供する5文字(ISOで定められた2文字の国コードを含む)のコードシステムです。

 

eCITES 電子許可情報交換タスクフォース(Task Force on eCITES EPIX Pilots)

絶滅のおそれのある動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)の電子許可情報交換(EPIX)タスクフォースは、国連欧州経済委員会(UNECE)と国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)がCITES事務局と協力して設立されました。

 

このタスクフォースの目的は、CITES許可証の不正使用の防止、合法的な取引の促進、およびCITES年次報告書の作成と提出の改善に貢献する、CITES許可証の電子交換(パイロットベース/ライブ)の開始および実施にあたり、管理当局(MA)およびその他の関連するCITES締約国の利害関係者を支援することです。

タスクフォースの活動は、まず、UNECEおよび/またはESCAPメンバーのCITES締約国のMA間およびMA間のCITES許可の電子交換に焦点を当てるものとします。

 

タスクフォースは、具体的に以下の活動を実施します。

  • 定期的な会議(物理/仮想)
  • 参加MAへのCITES許可証のパイロット/ライブ電子交換の手配と実行に関するサポート
  • UNECE、ESCAP、CITESおよびその他のパートナーのイベントに関連する能力開発
  • 実践から学んだ実践的な教訓の共有
  • 特にUNNExTおよび国連CEFACTの活動に関連するガイドライン、ブリーフなどの開発による支援(アドボカシー)
  • MA間のCITES許可の電子交換の更なる進展及びMAと他の規制当局との間の電子情報交換の円滑化に関する調査・研究
  • ガイドライン、推奨事項、技術仕様の起草を通じて、関連する標準とベストプラクティスの開発への貢献

 

循環型経済における持続可能なバリューチェーンの環境、社会、ガバナンスのトレーサビリティに関する専門家チーム(ToS(Team of Specialists) on Environmental, Social and Governance Traceability of Sustainable Value Chains in the Circular Economy)

毎年、4.8〜1,270万トンのプラスチックが海に投棄され、4,000万トン以上の電子廃棄物が発生し、生態系、生活、健康に深刻な被害をもたらし、毎年生産される食料の3分の1が無駄となり、食料安全保障はますます懸念されている等の現状をバリューチェーンから見直さなければならない。

バリューチェーンをより持続的に管理する業界の能力を高めるためには、消費者と企業の両方が、まずこれらのリスクの性質と大きさを認識する必要があり、環境、社会、ガバナンス(ESG)のトレーサビリティとバリューチェーンの透明性の両方を改善することが優先事項となります。

UNECEは、SDG12の達成におけるESGトレーサビリティの重要性を認識し、既に利用可能な豊富な専門知識と標準を有する、持続可能な漁業に関する専門家チーム(ToS)の検討対象を、循環経済における持続可能なバリューチェーンのESGトレーサビリティに拡大しました。

 

このチームの現在の焦点は、循環移行の優先産業におけるグローバルバリューチェーンに沿ったデータと情報の交換のためのESGトレーサビリティアプローチとシステムを通じて、持続可能な生産と消費のためのより良い、より多くの情報に基づいた意思決定に貢献することです。

 

<漁業>

国連CEFACTは、漁業漁獲情報の電子報告と、この惑星の最も重要な食料源の持続可能な利用のための電子管理と重要な統計データの収集を可能にするUN/FLUXデータ交換標準を開発しました。

 

<衣料と履物>

国連CEFACTは、労働者と環境に重大なリスクをもたらすセクターにおける複雑でグローバルなバリューチェーンのトレーサビリティ、透明性、持続可能性を促進するための政策提言、実施ガイドライン、グローバルな情報交換標準、ブロックチェーンシステムを含むツールボックスを作成したプロジェクト「衣服及び履物分野における持続可能なバリューチェーンの透明性とトレーサビリティの強化」を実施しています。

 

<農業と野生生物>

国連CEFACTは、電子衛生植物検疫証明書(eCert)、果物と野菜の品質証明書(eQuality)、野生生物の持続可能な取引のための電子証明書(eCITES)などの基準を開発し、国際的な処理された農産物に関する電子情報交換を可能にしました。電子情報交換は、農業貿易における規制管理を強化し、サプライチェーンにおける食品損失を大幅に削減するもの。情報技術は現在、農業生産に使用される水、エネルギー、土壌の使用などの重要な環境資源を保護するための世界的な取り組みに大きく貢献しています。